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1時間SS

  • 2010/04/23(金) 23:15:40

ワード 「かな」「蜜」「欲」「消える」

春香さんの休日コミュに繋げてみた。




トレードマークのリボンを外し、鏡台の前にそっと置く。鏡に映る自分をほんの少しジッと見て、酷い顔をしているのを自覚する。
最近アイドルランクが上がったためか、スケジュールに空きが出来ることは減った気がする。
実際、プロデューサーの顔を最近まともに見た覚えがない。
明日こそは、明日こそはと仕事をきっちりとこなし、急いで事務所に戻っても彼はいない。
アイドルランクが上がるのは確かに嬉しい。けれど、最近はそれだけじゃ足りない。
自分でも欲張りだというのはわかっているが、やはり諦めきれる問題ではない。一度溜息をつき、そのままベットに倒れこむ。
朝起きる時、眠る前も彼のことばかり考えている自分が、どこか馬鹿らしくも思える。
泣きたくなる時もあるが、彼と仕事が別れることになったわけではないのだし、いつかは会えるはずだ。
そう前向きにいつも自分を奮い立たせる。とは言ったものの既に意識は眠りへと傾き始めていた。やはり仕事の疲れはなかなか取れるものではない。
明日のオフを使って疲れを取ってしまおう。そう思いつつ眠気に任せて目をゆっくりと閉じた。



夢を見る事は別に珍しくはない。怖い夢を見て早く起きたいと願う事もあり、楽しい夢の中で目覚めたくないと願う事だってある。
そして、これは夢なんだと自覚することだってある。
ではこの夢はなんだろうか? 私が寝ていたベットが背後にあって、私の正面には黒いパーカーのような服を着た少女か少年かわからない人が立っている。
性別がわからないのは、フードを深くかぶっていて顔は見えないからだ。ただ、私とそれほど体格は変わらないようで、恐らく同年代だろう。
「もし、この二つのうち片方しか選べないのなら、どっちがいい?」
突然その黒いパーカーの子が聞き覚えのある声で私に問いかける。その子の右手の手のひらには写真立てがあり、私のプロデューサーが写っている。
そして左手には、同じく写真立てのようだが写っているのは私だ。服装や周りがライトで照らされているためかキラキラと光っているように見える。
恐らく、コンサートやライブの時の写真だろう。
「それは、どういう意味?」
私の質問には答えない。でも、何となく私の中で意味の答えは出ている。
アイドルとして成功するか、恋愛を取るか。多分、そういうことなんだろう。
「必ずどちらかしか選べないのかな・・・・・・?」
相変わらず私の質問には答えない。ただ、その二つを持つ黒い子の口元はどこか寂しげな物のようにも思える。
まずは彼の写真立てを手に取り、じっとそれを見つめる。プロデューサーが好きだというのは、間違いない。ずっと一緒にいたいと想う気持ちは誰にも負けない。
けれど、小さい頃からの夢であるトップアイドルになるという目標のために彼と別れなければならないというのなら、どうなのだろう。
そっともう片方の手で私の写真を手に取り、交互に見比べる。
プロデューサーは、俺を置いていってもいいと、冗談混じりに私に言った事がある。けれど、半分は本気なのだろう。
あの人は自分を過小評価していて、きっと自分では私をプロデュースしきれないのではと思っているに違いない。
そう思うと少し苛立ちを覚える。私は、貴方と一緒にトップアイドルになりたいんだと言ってやりたかった。
けれど、そう言うことは出来ず、あの時の私は慌てて首を横に振ることしかできなかった。
そんなことしか出来ない自分にも腹が立つ。
ふと、黒い子の口元が少し変わっていた、どこか苛立ちを覚えているようで唇を軽くかんでいるようだった。
あぁ、そうか。
「うん、決めた。」
「どっち?」
初めて、私の言葉に反応した事にも驚いたが、気を引き締めて答えを彼女の手に渡す。
渡された少女は口を軽く開けていて、驚いたまま凍りついている。
「どっちも、いらないの?」
どこか困惑した様子だった。私が渡したのは両方の写真立てだったからなのかもしれない。
「違うよ。」
「え?」
自然と伸びる手は黒い子のフードに向かい、それをそっと外した。
「両方だよ。」
フードの下には、ピンクのリボンを2つ付けた女の子がいた。
「欲張りなのはわかってるけど、両方欲しい。それに、諦めるのはまだ早いよ。」
そういい残してベットへと歩を進める。固まったまま何も言えずにいる私に振り返ると、どこか照れくさそうに薄く笑い、そして頷いた。








目覚めると、外の陽は既に傾きかけていた。慌てて時計を見ると、三時を既に過ぎていた。
「し、仕事っ!」
そう叫んでから気づく。そう、今日はオフなのだ。だから目覚ましだって鳴らないわけだ。
つけかけたリボンをゆっくりと綺麗につける。そして携帯を手に取り、電話帳を開く。
もちろん、かける相手はプロデューサーだ。仕事中かもしれない、会議中かもしれない、けれど今日くらい許して欲しい。数回のコールの後、繋がる音がした。
「はい、765プロダクションの────」
間違いなく、彼の声だ。無茶は承知で私の家に招こうとすると、偶然彼は近くを通っていて仕事も一段落ついたところだと言った。
なら、話は早い。めい一杯おめかしをして、キッチンに立ち、私の得意分野であるケーキを作ろう。たっぷりと蜂蜜を使って、甘く仕上げよう。
この日の思い出が、ずっと消えないように。


終わり

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